1月26日、鰻生息環境改善支援事業モニタリング調査が行われました
『ニホンウナギが絶滅の危機に瀕している。このままだとウナギが食卓から消える可能性がある』というTVや新聞での報道は皆さんもお気づきのことと思います。河川環境や海洋環境の悪化で日本ウナギは絶滅が心配されIUCN(国際自然保護連合)では絶滅危惧種に指定されています。ニホンウナギが国際的な希少生物の取引規制に関わるワシントン条約での対象になるかどうか瀬戸際にあるといっても過言ではないでしょう。昨年5月に環境省は川と海のつながりを良くする施策が重要とし「ニホンウナギ保全指針」を発表しました。もちろん日本の食文化としてのウナギの価値は非常に高く、貴重な水産資源として入間漁協でも漁業権魚種となっており幼魚の放流や保護増殖に努めています。そのウナギ幼魚放流の様子はこのブログで昨年5月に掲載していますので是非ご覧ください。
さて、今回ご紹介する鰻生息環境改善支援事業は水産庁によるものです。同庁より委託された全国内水面漁業協同組合連合会が事業主体となり各都道府県の漁協が協働しています。今回は水産庁からおいでになった増殖推進部栽培養殖課の伊佐課長(写真左)と内水面指導班の鈴木課長補佐(写真右)が現場をご覧になりました。
今やウナギの減少は国際的にも注目され国を挙げての保護増殖が急務となっています。今までの治水を第一に考慮した河川改修などによって失われてしまったウナギの隠れ場所を人工的に石倉を作ることで補完し魚類生息環境を改善するための支援事業です。今回のモニタリングは入間川の川越市にある八瀬大橋下流に昨年設置された石倉をウナギが利用しているかを調べる目的のものです。その方法は重機で石倉ごと持ち上げて魚を採取します。モニタリング用にあらかじめ細かなネットの上に設置した石倉を調べました。まず重機で石倉を持上げる前にすっぽりとネットで覆います。それを重機で川面から持ち上げると石倉を住処としていた生き物たちがネットの底にあつまるという仕組みです。
今回のモニタリングでは残念ながらウナギは確認できませんでした。しかし10センチもある大きなタモロコやマブナ、オイカワ、アブラハヤ、シマドジョウなどが石倉を利用していることが分かりました。また魚類の格好のエサとなる水棲昆虫ではカゲロウ、カワゲラ、トビケラなどが多数確認されました。またエビ類も数えきれないほどいました。このことから石倉は多様な生き物の生息場所になることは間違いないと実感できます。継続して設置することでやがてはそれらの生物を食べるウナギやナマズ、ギバチなどの魚も増えてくるでしょう。
現在、日本がウナギの消費大国であることは間違いありません。我々日本人は世界でも類まれなウナギの大量消費民族であることを自覚しなくてはなりません。このような事業が注目されることこそ肝要になるのではないかと思います。おいでいただきました埼玉県生産振興課、水環境課の皆様ありがとうございました。そして生物分類を担当された埼玉県水産試験場職員の皆様本当にご苦労様でした。今後の成果が期待されますね。
コロコロに太ったタモロコがいました。石倉は住み心地が良いのでしょう。
可愛いマブナ。一瞬、金ブナかとおもいましたが、銀ブナのようです。
埼玉県川越市の現場全景です。写真左が上流側、八瀬大橋が写っています。
集合写真をパチリ
昼食後、水産庁の伊佐課長と鈴木課長補佐のお二人を交えて意見交換会が開催されました。右側には埼玉県が誇る、加須の水産試験場チームが着席し活発な意見交換がなされました。
中央が生産振興課の梅沢氏はよく入間川にいらっしゃいます。右隣りが当入間漁協の古島組合長です。古島組合長は埼玉県漁連会長、全国内水面漁連役員を兼任されています。今回の国、県、そして市町村の枠を超えた貴重な話し合いの場がつくれたことは古島氏の人脈と気さくな人柄によるものではないでしょうか。ありがとうございました。
(写真と文=埼玉県 川の国アドバイザー・吉田俊彦)